社外メンターとして企業で働く女性リーダーとお話する機会があります。彼女たちの多くが、周りから認められてリーダーになったにも関わらず、心の中で「管理職としてやっていく自信がない」という悩みを抱えていらっしゃいます。
その背景には、まだまだ男性中心で組織が回っているという現状があります。
パワフルでなければならない、だけど男性のように働きたいわけではない……と、葛藤を抱えているのです。「旧来の男性スタイル」で働くのではなく、リーダーになっても自分らしく、しなやかに仕事をしてプライベートも楽しみたいという女性は増えています。
とはいえ、男性が長時間働き、女性は育児と家事を担う……。このようなスタイルはまだまだ健在。これに加えて「リーダーとして責任ある仕事をしよう」というのは、女性にとっての負担がさらに増したように思います。
そんな外からの圧力もあり、多くの若い女性の中に「キャリアを積み上げる自信がない」という感覚が生まれているのかもしれません。
私が関わってきたある「自信が無い」女性リーダーの方が、自信を得て行った事例をお話したいと思います。
地方の老舗企業で働く中間管理職、M子さん。数年前に女性初の管理職として昇進し、現在はマーケティングのチームを率いています。
当初「私のリーダーシップが弱いので、チームがまとまり切れないのではないか」という不安を持っていました。彼女の前任の男性リーダーは、声が大きく、部下をグイグイ引っ張っていく、指示命令型のリーダーで、M子さんとは全く違うスタイルでチームをまとめていたからです。
さらに、M子さんは自分がそのチームのリーダーになってからは、部下が自分を見下すようになったと感じているとのこと。
「女性のリーダーだからやりにくいと思われても、私にはどこを変えたらいいのかわからない」「もっと他の男性のように、強く命令したり、夜も部下と飲みにいったりした方がいいのでしょうか?」とモヤモヤを打ち明けてくれたのです。
彼女は、男性と同じようにできない私=弱い、と思い込み、自己評価が低くリーダーとしての自信を失いかけていました。
「キャリアを諦めて、降格して、リーダーを辞めた方がいいのでは」とまで思い詰め、すっかり自分への自信を失っていたのです。
M子さんの話を聞いた私は、「もう無理」と思うのではなく、「360度評価や周囲からのコメント」という「事実」を冷静になって集めていくことを提案しました。
次のメンタリングのセッションで話を伺うと、彼女は周囲の同僚や上司からの評価は抜群に高いことが分かりました。データとコメントが明確に示していたのです。
さらに、部下たちは、どうやら、前任者とM子さんのリーダースタイルの違いに戸惑っているだけ、ということが見えてきました。部下のちょっとした発言に「見下されている」と捉えていたのは、M子さんの自信のなさゆえでした。
次に私は、M子さんに「メンバーの話をよく聞くこと」を勧めてみました。
「自分らしいスタイルでチームで率いる」ことを目標にしたM子さんは、まずは部下と心を通わせてみようと、対話の機会を増やしていきました。
・あなたの個性は?
・今の仕事をどう思っている?どうしたい?
・困っていることはない?
・チャレンジしてみたいことはある?
・ライフプランは?キャリアプランは?
などの質問を、面談の時間だけではなく、出張中や、ランチタイムにも心掛けたそうです。
すると、次第に部下が心を開いてくれるようになり、M子さんを「話を聞いてくれる、柔らかいスタイルのリーダー」だと認めて、距離が縮まってきました。
自分ではない「他の誰か」になる必要はない
M子さんは自分に課していた「男性のように強く、完璧であらねば」という枠から出て、部下に協力を依頼できるようになり、チーム全体の雰囲気が明るくなっていきました。
M子さんは「自分らしいリーダースタイル」に自信を持つことができました。
さらにM子さんはセッションで、こう言いました。
「他の男性の真似をするのではなく、自分らしい方法でよかったんですね!」と。
弾けた笑顔で、自信を取り戻した瞬間です。それからのM子さんは、次のステージに向かって、チームでどんどん挑戦をしていくようになりました。
この事例から言えることは、「自信をつける」ためには、「自分のトラックを走れ」ということです。
うまくいっている人と比較して落ち込むことは誰でもあります。その人と同じやり方をしても、同じ結果が出るとは限りません。むしろ、いつまでもテープを切れない果てしないレースを走っているようなものです。
もし、そんなレースに参加している自分に気づいたら、他人のコースを外れて自分のトラックに戻りませんか。
自分のトラックの中で、自分に「これでいいんだ」「私はOK!」と言えるとき、自分の中心に軸が通る感覚があります。それは自分への信頼、ゆるぎない自信につながっていきます。
自分に「自信がない」と感じる時は、他の誰かの価値観に合わせていないか、自分ではない他の誰かになろうとしていないか、考えてみてください。
あなたらしく輝くための一歩をご一緒できたら嬉しいです。
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